ベトナム食品ビジネス成功事例|日本食品企業が顧客を獲得したケーススタディ

ケーススタディ:日本の食品企業がベトナムで顧客を獲得した事例

日本の食品企業がベトナム市場で成功を収めるには、ブランド、品質、現地化戦略、パートナー選定などが非常に重要です。以下では、具体的な企業例をもとに、どのようにしてベトナムで顧客をつかんだのかを分析します。

1. 神戸物産 × リベト商事:業務スーパー展開による日系食材の浸透

一つの明確な成功例として、神戸物産(KOBE BUSSAN) がベトナムで「業務スーパー」形式を導入している事例があります。jetro.go.jp

  • 経緯と展開
    神戸物産は2019年にベトナム現地企業であるリベト商事(Rivet Co., Ltd.)と提携し、ベトナム全国で日本食材・加工食品を販売する店を展開しています。
    現在では約15店舗を運営し、調味料、菓子、冷凍食品など約1,400アイテムを扱っています。

  • 成功の要因

    1. 商品の品揃えと日本品質
      多様な日本食材をラインナップし、品質管理を厳格に行うことで、日本ブランドへの信頼を得ました。神戸物産自身が「高品質と価格の両立」を目指していることが報じられています。

    2. 流通ネットワークと現地パートナー
      リベト商事との提携で物流網や現地ノウハウを活用。配送体制を整え、地方にも日本食材を届けられるようにしました。

    3. 低価格帯と日常化
      「業務スーパー」形式という名のとおり、日常品を安く提供することで、顧客の購買ハードルを下げ、リピート率を高めています。

この事例は、「日本食材をベトナム人に日常的に使ってもらう」モデルとして成功しており、他の食品企業にも学ぶ点が多いです。


2. コイケヤ(湖池屋):ベトナムでのスナック工場建設プロジェクト

もうひとつの興味深い事例として、スナック菓子メーカー コイケヤ(KOIKEYA) のプロジェクトがあります。kirineng.co.jp

  • プロジェクト概要
    コイケヤは、ベトナム向けにスナック菓子を生産する現地工場建設を企画。設計施工会社を通じて、ベトナムで3,366.4㎡の工場を建てました。
    元請として日本の設計技術者や現地スタッフを統括しつつ、現地施工企業を活用してコストを抑える方式を取りました。

  • 成功&苦労した点

    • 日本と同等の品質・安全基準を確保するために、資材調達、衛生管理、製造ラインの設計など、細かな管理が必要でした。

    • ベトナム語・文化・作業慣行の違いを乗り越えるコミュニケーションが鍵でした。言語・運用ルールを双方で調整し信頼関係を築いたことが成功要因とされています。

    • 現地企業を活用することで、コスト抑制と現地適応性が得られました。現地企業の力を借りながら、日本品質を維持するバランス感覚が求められました。

この事例は、「現地生産によるコスト優位性」と「日本品質の維持」が両立できるモデルとして注目すべきものです。


3. 日本ハム / 信州ハム:加工食品分野での現地展開

加工食品分野では、日本ハム(NH Foods Vietnam)信州ハム(Shinshu NT) の進出例がよく知られています。logi-square.com+1

  • NH Foods Vietnam
    日本ハムは2011年にベトナム子会社を設立し、南部ロンアン省や北部フンイェン省に工場を構えています。取り扱う主力商品はハム・ソーセージ、冷凍唐揚げ、トンカツなどです。
    特に「Parit(パリッとした食感)」を実現する商品の差別化と、日本ブランドとしての安全性・品質訴求が現地でも信頼を得る要因となりました。

  • 信州ハム(Shinshu NT)
    信州ハムは、他の企業と共同出資で設立された子会社で、ハム・ソーセージなどの肉加工品を生産。日系スーパーや外資系スーパーに供給しています。

  • 成功要因と留意点

    1. 日本ブランドと安全訴求
      ベトナム国内の消費者は日本食品に対して信頼を持つ傾向があり、「安心・安全・無添加」などの訴求が有効です。jetro.go.jp+1

    2. ローカル対応・現地化
      味やパッケージ、サイズなどを現地の嗜好に合わせて調整し、消費者に受け入れられるよう適応しました。

    3. チャネル展開
      日系スーパー、外資スーパー、地元チェーンを組み合わせて販売網を拡げました。特に都市部でのスーパーマーケットやコンビニを活用。

このように、日本ハム・信州ハムは加工食品でのブランド価値を武器に、現地需要を捉えたモデルを築いています。


事例から得られる教訓と成功のポイント

上記の事例を整理すると、以下のような共通点と注意点が見えてきます。

テーマ 成功のポイント 注意すべき課題
ブランドと品質訴求 日本ブランドの信頼性、安心・安全訴求 品質基準を維持するためのコスト管理が必要
ローカル適応・現地化 味、パッケージ、品揃えの現地化 日本基準をそのまま持ち込むと受け入れられない可能性
チャネル・流通 現地パートナーとの提携、物流網整備 地方や中小都市での流通コスト・維持が難しい
コスト制御 現地生産、現地企業活用 初期投資、設備導入、言語・文化差異対応
人材・信頼関係 現地スタッフの育成と関係構築 離職率、文化摩擦、コミュニケーション齟齬

たとえば、神戸物産は流通網とパートナー活用で「低価格 × 品質」を実現しました。コイケヤは現地生産によってコスト優位性を確保しました。日本ハムはブランド力と品質訴求で消費者に認められました。これらは異なる業態ですが、共通して「現地化」と「信頼構築」の要素を持っています。


まとめとアドバイス

日本の食品企業がベトナムで顧客を獲得するには、「日本ブランドの強み × 現地適応力」が不可欠です。単に輸出するだけではなく、現地に根を下ろすモデルを作ることが成功の鍵です。

特に、新規参入を考える企業に対して以下のアドバイスをしたいです:

  1. パートナー選びを慎重に
     物流、流通、販売網を持つ現地企業との連携は大きな強みになります。

  2. 品質管理制度を最初から設計する
     日本品質を維持するための工程管理、衛生管理、監査体制を導入すること。

  3. 小さく始めて試行する
     試験マーケットを設け、消費者の反応を見ながら徐々に拡大する。

  4. 現地の規制・表示義務を遵守する
     ベトナムでは食品安全証明・成分表示・ラベル表示規制が厳しいため、法務面でのサポートが必要。digima-japan.com

  5. ブランドを育てる時間を取る
     即時の利益よりも信頼構築を重視し、長期視点で市場を育てること。

これらを踏まえて進めば、ベトナム市場で成功を収める可能性は十分にあると私は確信しています。

ベトナムと日本の消費者行動を比較|企業が押さえるべきマーケティング戦略

ベトナムと日本の消費者行動の比較 ― 企業が押さえるべきポイント

国や文化が違えば、消費者の価値観や購買行動も大きく異なります。日本企業がベトナム市場へ進出する際、「日本で成功した商品だからベトナムでも売れるだろう」と考えるのは危険です。実際には、ベトナムと日本の消費者行動には多くの違いがあり、それを理解して戦略に反映させることが成功のカギとなります。

本稿では、日本で長年培ったマーケティング経験を踏まえつつ、ベトナム在住者の視点から両国の消費者行動を比較し、企業が注意すべきポイントを整理します。


👥 1. 年齢構成と購買力

日本は世界でも有数の高齢社会であり、購買の中心は中高年層です。彼らは安定した収入と貯蓄を持ち、**「品質・信頼・安全」**を重視して商品を選びます。

一方、ベトナムは平均年齢が約30歳と非常に若い国です。購買力を伸ばしているのは、都市部に住むミレニアル世代やZ世代。彼らは**「新しい体験・デザイン・ブランドストーリー」**に敏感で、SNSを通じた情報発信にも積極的です。

👉 企業が学ぶべきこと:
日本市場では「安心感」が売りになる一方、ベトナム市場では「トレンド性」や「体験価値」が重視される。

💰 2. 価格に対する感覚

日本の消費者は「品質には相応の価格を支払う」傾向があります。安い商品よりも「コストパフォーマンス」や「長持ちすること」に価値を感じます。

対してベトナムでは、価格に敏感な層が依然として多く存在します。日常品は「できるだけ安く」、しかし特別な体験やブランド品には思い切って支出する傾向があります。たとえば若者は、毎日のランチは安価に抑えても、最新のiPhoneや海外ブランドの化粧品には高額を払うことをいといません。

👉 企業が学ぶべきこと:
二極化する消費行動に合わせて、価格帯を工夫すること。ベトナム市場では「エントリーモデル+プレミアムライン」を併用する戦略が有効。

📱 3. 情報収集と購買チャネル

日本では今でもテレビCMや量販店のチラシが購買行動に影響を与えます。もちろん近年はECサイトやSNSも利用されますが、まだまだ「リアル店舗での確認」が重要視されています。

ベトナムでは、Facebook・TikTok・ZaloといったSNSが圧倒的な購買チャネルです。特にTikTok Shopは若者の間で爆発的に普及しており、「動画で見て、そのまま購入」という流れが定着しています。

👉 企業が学ぶべきこと:
ベトナム市場を攻略するには、SNSとECを融合したデジタル戦略が不可欠。広告費の使い方も、日本のようにテレビよりSNSに比重を置くべき。

🙌 4. ブランドへの忠誠度

日本の消費者は一度信頼したブランドを長く使い続ける傾向があります。例えば「家電はパナソニック」「車はトヨタ」といったロイヤリティが強い。

一方、ベトナムの消費者はブランドスイッチが早い傾向があります。「友達が勧めたから」「インフルエンサーが紹介したから」といった理由で簡単に新しいブランドを試します。そのため、プロモーションや口コミ戦略が極めて重要です。

👉 企業が学ぶべきこと:
ベトナム市場では「ブランドの信頼性」よりも「話題性」「新鮮さ」を常に提供することが成功の条件。

🍻 5. 消費スタイルとライフスタイル

日本では「計画的消費」が一般的です。ボーナス時期に合わせて高額商品を購入したり、長期的に資産を貯めて買い物をする傾向があります。

ベトナムでは「瞬発的な消費」が目立ちます。特に若者は「今楽しみたい」という意識が強く、食事や旅行、ファッションなどに積極的に支出します。その一方で、金融リテラシーがまだ発展途上であり、分割払い・ローンでの購入も一般的です。

👉 企業が学ぶべきこと:
「今すぐ楽しめる体験」や「分割購入のしやすさ」を訴求することで、消費者心理に刺さりやすい。


ベトナムと日本の消費者行動は、同じアジアでも大きく異なります。

  • 日本:品質重視、安心感、長期的なブランド忠誠

  • ベトナム:若さ、トレンド、SNS主導、スピード消費

どちらが優れているという話ではなく、それぞれの文化と経済状況に根ざした行動パターンです。日本企業がベトナム市場で成功するためには、単純に「日本のやり方を持ち込む」のではなく、現地消費者の習慣を理解し、柔軟に戦略を調整する必要があります。

最終的に重要なのは、「現地の声をよく聞き、消費者と一緒にブランドを育てる姿勢」です。これこそが、ベトナムで長期的に愛される企業になるための第一歩だと私は考えます。